没後100年を記念して、グスタフ・クリムトが、国内過去最多の油彩画25点を引っ提げこの春やって来ます!わくわくしますね~。
来日する美女たち(作品たち)をご紹介すると共に、見処を探って行きましょう。
同時期開催のウィーン・モダン「クリムト、シーレ世紀末の道」はこちらからどうぞ。
クリムト展開催期間&開室時間
開催期間
2019年4月23日(火)~7月10日(水)
(※豊田美術館では、7月23日(火)から10月14日(月・祝)にて開催)
休日
5月7日(火)20日(月)27日(月)
6月3日(月)17日(月)
7月1日(月)
開室時間
午前9時30分~午後5時30分
※金曜日は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで)
来日作品
ユディトⅠ(Judith I)
1901年
ウィーン美術館蔵
半眼と半開きの唇からは、吐息が漏れ聞こえてきそうです。
何とも言えない恍惚とした表情の先には何があるのでしょうか。彼女の頬はバラ色に上気し、その左脇には男の生首が見えます。明るく光が当たったユディトの身体とは真逆の色彩に、暗い地場を持った別次元の入り口が隠れているかのように、男の頭部は描かれています。
ユディトⅠのモデル
2015年に制作された黄金のアデーレ 名画の帰還という映画がありました。
クリムトの代表作であるアデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I(通称、黄金のアデーレ)は、ナチスに没収された後、オーストリアの国家財産となっていました。モデルとなったアデーレの姪は、正当な持ち主として、名乗り出、その名画を取り戻すために戦いを挑み勝利します。
そのアデーレこそが、ユディトⅠのモデルでもあり、クリムトとは一時期愛人関係にあったとも言われています。
作品のテーマ、ユディトとは、誰なんでしょう。
モデルは、アデーレ。では、このユディトとはいったい何者なのでしょう。
ユディト記は、ユディトという女性の信仰を描く物語。ユディト記は教派によって扱いに違いがあり、ユダヤ教とプロテスタントでは外典として扱い、カトリック教会と正教会では旧約聖書に加えている。
物語は以下のようなものである。アッシリア王ネブカドネツァルが自らに対して協力的でなかった諸地域に討伐のための軍隊を差し向ける。そこでユダヤにはホロフェルネスが派遣され、彼はベトリアという町を囲む。水源をたたれたベトリアでは降伏を決意するが、美しい女性ユディトが一計を案じる。彼女は敵のホロフェルネスの陣営に忍び込み、すきをみてホロフェルネスの首をとってきたのである。こうして司令官を失ったアッシリアの軍勢は敗走した。
しかし、ベトリアという町が架空のものであることや、ネブカドネツァルがアッシリアの王でないことなどから、架空の物語であると考えられている。
ウィキペディアより
敵将の首を取った瞬間のユディトを官能的な恍惚をもって描いています。
立体的なユディトの背景には、平坦な金彩が華やかにまかれています。透けた薄着の上にも平坦な金彩が施され、否応なくユディトの裸身は怪しい輝きを持って見る物に肉薄して来ます。
それまでに描かれてきた勇敢な行動を起こした英雄ユディトではなく、敵の首を掻き切る事に倒錯的な喜びを感じているかのようなファムファタールとして、ユディトは描かれているのです。
女の三世代(Die drei Lebensalter)
1905年
ローマ国立近代美術館
幼子を腕に抱えた若い女性の後ろには、既に屍になったかのような肌の色艶をした老女がうなだれています。
これは女性の成長における3世代が描かれてる作品です。当時の人々の年老いるという事に対する概念に気付かされます。今より寿命も短く、8割程度の人間が病院で亡くなる現代と違い、死はもっと身近なものであったのでしょう。
日本では地獄門で有名なロダンとも親交があり、クリムトは敬愛していたようです。そのロダンの作品をモチーフとして、この老婆は描かれていると言われています
当時、ヨーロッパを席巻していたジャパニズムの影響をクリムトも受けていました。特に尾形光琳に強くインスパイアされたと言われていますが、この作品にはそれが色濃く見受けられますね。
ヌーダ・ヴェリタス~裸の真実(Nuda Veritas)
1899年
ウィーン国立図書館演劇コレクション
クリムトの代表作のひとつでありますが、女性の全裸を露わにしたことから、当時、賛否両論を巻き起こした問題作でもあります。ジャパニズムの影響が濃くなる以前のクリムト作品中でも、解釈が分かれる謎めいた美女の立像であり、ポイントは4つあります。
ドイツ人フリードリッヒ・シラーの詩
冠頭に刻まれたドイツ語は、詩人フリードリヒ・クリストフ・フォン・シラーから引用してます。
ヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラー(ドイツ語: Johann Christoph Friedrich von Schiller、1759年11月10日 – 1805年5月9日)は、どドイツの詩人、歴史学者、劇作家、思想家。ゲーテと並ぶドイツ古典主義(Weimarer Klassik)の代表者である(初期の劇作品群はシュトゥルム・ウント・ドラング期に分類される)。独自の哲学と美学に裏打ちされた理想主義、英雄主義、そして自由を求める不屈の精神が、彼の作品の根底に流れるテーマである。青年時代には肉体的自由を、晩年には精神的自由をテーマとした。彼の求めた「自由」はドイツ国民の精神生活に大きな影響を与えた。
劇作家として有名だが、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の原詞で最もよく知られるように、詩人としても有名である。シラーの書く詩は非常に精緻でありかつ優美であるといわれ、「ドイツ詩の手本」として今なおドイツの教育機関で教科書に掲載され、生徒らによって暗誦されている。
日本では、古くから舞台ドイツ語の影響もあって、「シルレル」(太宰治の「走れメロス」など)あるいは「シルラー」とも表記された。「シラー」は正確には[ˈʃɪlɐ]と発音される。
ウィキペディアより
kannst du nicht allen gefallen durch deine that vnd dein kvnstw erk mach es weni gen recht vielen gefallen ist .schiller.
冠頭に刻まれた文から1文字ずつ拾って、ドイツ語でグーグル翻訳を掛けてみました。Vは、Uじゃない?って提示されたので、それで翻訳すると、こんな日本語に。
翻訳に掛けると大体こんな感じになっちゃいますよね。禅問答みたいですが、結局、全ての人を納得させ喜ばせる事は難しいし、たくさんの人に対してもそれは出来ない。こんな感じでしょうか。
様々なサイトで、この文については触れられています。
汝の行いと芸術で多くの人の心に喜びを満たせないならば、少なき人の真の喜びのためにそれを成せ。多くの心にそれが叶うのは悪しきことだ。
もし、あなたの行いと芸術で数多くの人びとを満足させることができないならば、少数者を満足させるために行為と芸術を行え。多数の人が喜ぶことは悪いことなのだ。
汝の行いまたは汝が表現せしめるものにおいて、万人を幸福たらしむることの難きを思いたまえ。幾人かに喜びを与えんと欲せよ。如何なる人をも幸福たらしめることは、悪しき事と覚えよ。-シラーより
こちらに向けられた手鏡(もしくは球)
形状が球であるか、平たいか定かではないのですが、こちらに向けて光が放たれています。表題にある裸の真実、この真実の光が放たれていると考えられています。
両足に絡もうとする蛇
画面下から題名Nuda Veritasの上を這うよう身体を伸ばし、更には女性の両足を括ろうとしているかのようにも見える形で鎌首を上げています。蛇は様々な絵画でシンボリック的に使われています。
当時、クリムトは保守的な芸術集団と対立していました。その対立の揶揄として蛇を使ったのかもしれません。
足元のたんぽぽ
私には最初、タンポポに見えませんでした。既に咲き終わって、次の世代へと種を飛ばす綿帽子だと思えば、そのようにも確かに見えますが、茎の先端はまるで尻尾のように細くなっています。その事から、これは胞子、精子だともされます。
種子、タネの象徴としてこの植物らしきものは描き込まれているのでしょう。
このように様々な仕掛けが施されたヌーダ・ヴェリタスですが、クリムトが掲げたウィーン分離派が目指す方向性を示したとも、その運動に参加を促すためだとも言われています。
さて、この後の作品については、おいおい説明を加えていこうと思います。まずは写真だけ掲載しておきますね。
ベートーヴェン・フリーズ(正面の壁)敵意に満ちた力
ベートーヴェン・フリーズ(部分)
ヘレーネ・クリムトの肖像
オイゲニア・プリマフェージの肖像
赤子(ゆりかご)
アッター湖畔のカンマー城III
マリー・ヘンネベルクの肖像
家族
その他の代表作
接吻
クリムトというと、まず私の頭の中に浮かぶのが、これです。版権も切れているので、あらゆる場所で使用されてますよね。クリムトの代表作の1つです。
切り立った花畑に不安定な格好で並び立つ男女という大胆な構図に、私達日本人が見慣れた琳派、尾形光琳が加筆したのかと見まごう背景、身体にまとわせたものも、これまた大胆なテキスタイル見本のよう。
なんでしょう。華やかな色彩なのに、何ともいえない不安定な情緒が見え隠れするのは。
ウィーン国際空港の手荷物受取上には、この接吻が大きく一面に描かれているといいます。
ダナエ
パラス・アテナ
同時期開催の国立新美術館ウィーン・モダンで展示されます。
プレミアムナイト鑑賞券
残念ながら、既に完売のようですが、詳細を掲載しておきます。
夜間に人数限定でクリムト展を鑑賞できるチケットです。公式図録、音声ガイドに加え、ウィーンの老舗ワイナリー、シュルンベルガー醸造から輸入したクリムト・ラベルのスパークリングワイン「キュヴェ・クリムト」ミニボトル(200ml)のお土産つき。また、クリムトがウィーンの分離派会館に描いた壁画《ベートーヴェン・フリーズ》(原寸大複製)を、写真撮影していただける時間も設けます。ぜいたくな夜をお過ごしください。
クリムト展公式HPより
日程
5月16日(木)、18日(土)、6月4日(火)
時間
18:00~20:30(入室は20:00まで)
定員
各回400名
クリムト展に無料で入れる?!
シルバーデーは65歳以上が無料!
日程
5月15日(水)、6月19日(水)
中学生以下はいつでも無料
大学生・専門学校生・高校生も無料デーがある!
日程
6月1日(土)~6月14日(金)
その他、割引情報
団体割引の対象は20名以上。
身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は当日一般料金の半額。
都内の小学・中学・高校生ならびにこれらに準ずる者とその引率の教員が学校教育として観覧するときは無料(事前申請が必要)
証明できるものを持参
いずれも、年齢など、条件が証明できるものを持参する事。
元SMAP稲垣吾朗さんが音声ガイドを担当!
これも話題になりそうですね。ゴロウ・デラックスでのゲストとの軽妙なやりとりは彼のエスプリを感じさせます。
そんな稲垣吾朗さんが音声ガイドを担当されるそうです。これも楽しみですね。
開催場所
東京都美術館
アクセス
JR上野駅公園口より徒歩7分
2019年クリムト展チケット(HPより)
数量限定 鑑賞ガイド&チケットファイル セット券
クリムト展の展示作品や見どころが分かる冊子「鑑賞ガイド」、《ユディトⅠ》《ベートーヴェン・フリーズ》をあしらった「チケットファイル」を特製封筒に入れてチケットお受け取り時にお渡しします。
販売期間
2018年11月10日(土)~ 2019年4月22日(月)
価格
2,000円
販売場所
セブンネットショッピング
東京都美術館内ミュージアムショップ(完売)
JR上野駅構内エキュート上野チケットショップ
※鑑賞ガイドはA4サイズ、フルカラー、全20ページ。チケットファイルは215㎜×100㎜、フルカラー、プラスティック製
※鑑賞ガイド、チケットファイル、特製封筒はいずれもセット券限定、展示室内クリムトショップでの販売の予定はありません。
※なくなり次第、販売終了。
数量限定 特製ノート セット券
表紙にクリムトの絵画をあしらったノートと前売鑑賞券を、セットでお得にご購入いただけます。表紙の絵柄は出展作品の《ユディトⅠ》《オイゲニア・プリマフェージの肖像》《アッター湖畔のカンマー城Ⅲ》《ベートーヴェン・フリーズ》の全4種。いずれか1種をチケットお受け取り時にお渡しします。どの表紙が手に入るかはお楽しみ。
販売期間
2018年1月17日(土)~ 2019年4月22日(月)
価格
1,600円
販売場所
セブンネットショッピング
ローソン・ミニストップ・ローチケHIBIYA TICKET BOX
※ただしノートの引き取り場所は、ローチケHIBIYA TICKET BOXのみ。
チケットぴあ店舗(チケットポート関東8店舗)
※池袋店、新宿店、渋谷店、銀座店、東京店、吉祥寺店、横浜店、大宮店
※特製ノートは、展示室内クリムト展ショップでも販売予定
※表紙の絵柄は指定出来ません。
※なくなり次第、販売終了
ローソン、ミニストップ、ローチケHIBIYA BOXで購入の場合
必ず引き換え期間内(1/17~4/22)にローチケHIBIYA TICKET BOXにて特製ノートをお引き取り下さい。特製ノートの引き換えはローチケHIBIYA TICKET BOX限定となります。ローソン、ミニストップでは引き換え出来ません。
数量限定 デミタスカップ&ソーサー セット券
本展特製のデミタスカップとソーサー、前売鑑賞券のセットです。クリムトの《オイゲニア・プリマフェージの肖像》に描かれた東洋風のモチーフをあしらったデザインです。セット券でのみ手に入る限定柄です。
販売時期
2019年1月17日(木)~4月22日(月)
価 格
3,500円
販売場所
ローソンチケット
※ サイズ:【カップ】外径54mm×高さ57mm(取っ手を含まず)【ソーサー】外径113×高さ19mm
※ グッズは展示室内クリムト展ショップで引き換えになります。
※ 別の絵柄のデミタスカップ&ソーサーは、展示室内クリムト展ショップでも販売予定です。
※ なくなり次第、販売終了。
数量限定 《ユディトⅠ》ミニチュア絵画 セット券
クリムトの「黄金様式」の時代の代表作《ユディトⅠ》を1/12サイズで精巧に再現したミニチュア絵画と前売鑑賞券のセットです。額縁のあしらいも丁寧に仕上げました。
販売時期
2019年1月17日(木)~4月22日(月)
価 格
3,500円
販売場所
チケットぴあ
※ グッズは展示室内クリムト展ショップで引き換えになります。
※ 《ユディトⅠ》ミニチュア絵画は、展示室内クリムト展ショップでも販売予定です。
※ なくなり次第、販売終了。
上野のれん会タイアップセット券
上野周辺の飲食店約100店が集う「上野のれん会」の加盟店から厳選した店舗の食事券などがついたお得なセット券です。
販売時期
2019年2月10日(日)~4月22日(月)
価 格
2,000~3,000円
販売場所
セブンチケット
※ 店舗によって価格が異なります
※ 本券は「一般」用です
※ 食事券・引換券の使用は8月31日(土)まで
通常前売・当日券
当日 | 前売り・団体 | |
一般 | 1,600円 | 1,400円 |
大学生・専門学校生 | 1,300円 | 1,100円 |
高校生 | 800円 | 600円 |
65歳以上 | 1,000円 | 800円 |
販売時期
前 売 券 | : | 2019年1月17日(木)~4月22日(月) |
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当 日 券 | : | 2019年4月23日(火)~7月10日(水) |
販売場所
東京都美術館
公式サイト(オンラインチケット)
セブンチケット
ローソンチケット
チケットぴあ
イープラス
CNプレイガイド
2019年クリムト展、混雑予想
日本人にも大人気のクリムトです。ましてや今回は過去最多の25点がやって来るという事で、開催側の力の入れようも多種用意されたチケットで分かるかと思います。
まだ開催まで2カ月ほどあります。開催前にTVなどで特集が組まれてしまえば、開催と同時に混み合う事が予想されます。開催後しばらくしての放映であればスタートダッシュで行った方が良いでしょう。
昨年2018年に開催された藤田嗣治展は、開催後しばらくしてからのTVの特集でしたので、開催間近は空いていました。
東京都美術館の詳しいアクセス方法は上記の藤田展に記載してありますので、必要な方はご覧になってみて下さい。